3年目となった文科省定員内不合格調査の公表 (会報2025年2月号より)

 全国連運営委員会 高校担当

 昨年(2024年)12月24日に文科省から事務連絡「令和6年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)の集計結果及び今後の高等学校入学者選抜等における配慮等について」が出され、2024年度(令和6年度)各都道府県の定員内不合格者数が公表されました。(前述調査の113ページ)3年目の公表となります。

《全体的な結果》
 2年目の昨年度から全都道府県の定員内不合格者数が公表されていますが、昨年度2004人から今年度2029人と増えています。単純に数だけで比較していいのかということもありますが、増えていることについては、やはり「なぜ?」と疑問が生じます。調査・公表をすることで一定の歯止めがかかり減少するものという期待があるからです。「最終の日程において実施される選抜」での不合格者数は昨年度631人で、今年度626人とわずかに減っていますが、やはり多いです。
 今年度から新しく「進学希望があるにも関わらず進学先が定まらなかった者の数」という項目が設けられています。これは6月25日通知の「域内の学ぶ意欲を有する中学生の進路先が確保されているかについても、教育委員会の高等学校担当部署と中学校担当部署が連携するなどして、改めて確認、分析するとともに、…」に関連する項目です。定員内不合格を出していない、もしくは最終日程選抜で出していない都道府県は0となっていますが、(5以下)と答えたのが2県で、それ以外は「把握していない」と答えています(32県)。
 全国連で昨年8月に行ったアンケート調査で「最終入試で不合格になった人のその後の進路について調べていますか」という質問についても、アンケートに答えた所のすべてが「調べていない」でした。入試の業務以外だ、個人情報である、中学校で進路状況を把握する、といったことがその理由ですが、公約として出された定員枠であるにもかかわらず不合格を出すわけですから無責任と言わざるをえません。この新しい調査が受験結果に良い影響をもたらすことを願います。

《増減の状況》
 定員内不合格0は変わらず9都道府県です。北海道、東京、神奈川、愛知、滋賀、大阪、兵庫、和歌山と、前年度5人以下だった三重です。これまで0だった埼玉で1人出されています。
 3年間の各県の増減状況は、徐々に増えている所、徐々に減っている所、一旦減ってその後は変わらない所、増えたり減ったりの幅が大きい所などさまざまです。
 昨年度より増えたのは15県で、100人以上も出されている県が5県もあり、沖縄と高知は200人を超えています。これらの県では過疎化、少子化が進み定員割れする高校が多く、全体の高校のうちの50%前後が定員内不合格を出していることが全国連のアンケート調査でも明らかになりました。
 高知県教委に状況を聞くと、通学の交通事情などもあり統廃合はできないため定員割れしている高校が多く、学級減をするということでした。地元の高校を存続させ受験した生徒はすべて受け入れるようにすればいいのにと思うのですが。未だに適格者主義が根強く残っています。また、存続させるための条件整備が重要で、国はもっとお金を出すべきですが、特別支援学校の増設にお金をかけています。
 一方、昨年度より減った県は19県です。増減がなかったのは0以外の所では5県です。愛媛では、一昨年度67人、昨年度111人、今年度61人と増減の幅が大きくなっています。福岡では一昨年度148人、昨年度153人ととても多かったのですが、今年は70人に減っています。高教組組合員から県議に働きかけて議会で質問し、適格主義者からの意識改革など校長会等で指導したことが大きかったといいます。

《千葉では》
 定員内不合格が出される中でも粘り強く受験が続いています。一昨年43人、昨年度56人でしたが今年度28人に減りました。ところが、昨年から受験し続けているHさんは秋受験でも不合格とされたのです。県と話し合って受験(作文・面接)の配慮もして懸命に取り組んだにもかかわらず「学ぶ意欲」が見取れないとして不合格とされたのです。これは差別です。見取れないのは教員の力不足です。まずは入れること、学ぶ機会を奪わないことです。

《埼玉では》
 毎年県教委から報告を受け、今年度も0と言われていたのに1校出されていたため、なぜ? と県に説明を求めると、直接指導できない市立高校ということでした。市教委との話し合いでは、定時制で1名、障害が理由ではない、県と同様に定員内不合格を出してはいけないという考えである、などの説明はあったものの、今後出さないためにも理由を明らかにするよう求めても個人情報ということで明らかにしていません。

《調査・公表も3年目》
 国会で取り上げ、調査を公表することで、「インクルーシブ教育」とも相まってマスコミも大きく取り上げ、高校で一緒に学ぶ様子など報道するようになっています。文科省の通知も具体的な指示になっています。しかし数としては減っていかないし、地域格差は大きいままです。通知には(定員内不合格は)「直ちに否定されるものではありませんが」と書かれています。法律で合否の判断は校長となっていますから、校長が受けとめるという判断をすればいいだけのことです。でも現実的には特別支援学校高等部の増設が進んでいます。
 それでも、やはり、だれでも高校で学べるはず。入っていくしかありません。高校受験も直前に迫ってきました。浪人生活を余儀なくされながらも、初めての受験で戸惑いながらも、高校で一緒に学ぶことをめざして、皆さんの入学が実現するよう心から応援しています。

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参照 文科省 令和6年12月 「令和6年度高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」p113

                                                              

以上