お悩みQ&A 授業中、子どもを一人だけ取り出して別室に…(会報2025年10月号より)
東京都・運営委員 片桐健司
〈相談〉 小学校低学年です。どちらかというと落ち着きがなく勉強もあまりよくできない子ですが、先日、授業をサポートしている先生から、「この前の算数の時間、お子さんを別室に連れて行って教えました」と言われ、びっくりしました。個別に丁寧に見てもらえるのはいいのですが、みんなと一緒の教室から連れ出すのはどうなのでしょうか。親として納得できません。どうしたらよいでしょう。
〈お答え〉 保護者にことわりなく(子ども自身が了解しているかどうかも含めて)子どもを教室から連れ出すことは、ゆるされることではありません。たとえ、その子のためだといっても、みんなと「等しく教育を受ける権利」を奪っているわけですから、「今後、このようなことはやめてください」と、担任にもそのサポートの先生にも伝えましょう。できたら、どうして子どもを教室から子どもを連れだしたかも聞いておきましょう。担任の指示なのか、サポートの先生の独自の判断なのか、この二人で相談してそうしたのか、そして校長は分かっているのか、なども確認してみるといいでしょう。
授業というのは、子どもたちどうしの学び合いです。一方的に先生が子どもたちに教えているわけではありません。
たとえば、くり下がりの引き算の解き方を学ぶ授業であったとすると、「43ー25」という計算をするのに、1の位の「3ー5」をどうしたらよいか、まず、先生は子どもたちに問いかけます。そこで子どもたちはこうしたら、ああしたらと、さまざまな考えを言います。うまく言えない子もいます。でも、友だちの考えを聞いて、自分だったらどうするか考えている子もいるかもしれません。友だちの考えを聞いたり、自分の考えを言ったり、そして自分だったらどうするか考えたり、ずっとぼんやりしている子も含めて、授業は学び合いなのです。ぼんやりしている子が学んでいないなんて思ってはいけません。そのときはよくわからなくても、授業中の友だちの言葉や様子は、しっかり心の底に残っています。そのときの体験が、3年とか5年たって、突然その子を動かしたりするのです。みんなと一緒に学ぶことの良さはそこにあります。「わからないでそこにいるのはかわいそうだ」などとよく言われますが、そんなことはありません。 そういう学び合いから子どもを連れ出すのは、いいことではありません。勉強の苦手な子を個別にみれば子どもはすぐできるようになるなんて、そんな先生は見たことがありません。何かができるようになるには、ものすごい時間と教える側の労力が必要です。でも、子どもたちはそういう友だちを変える力をもっています。授業中に子どもを連れ出すことは、やめてもらいましょう。

