障害児の高校入試の全国状況2026春~高校でもインクルーシブ教育の実現を!
埼玉県・運営委員 竹迫和子
『障害児の高校進学・ガイド』(北村小夜さん編集、増補改訂版、2020年発行)を開くとすぐに、学校教育法で高校は「中
学校を終えたもののいくところであることを示している」と書かれている。さらに学校教育法施行規則には、高校の入学は校長が許可するとあるが、「校長が受け入れるつもりさえあれば許可すればよいのである」とも書かれている。障害があるから高校で学んではいけないという決まりはない。なのに壁は厚い。まずは入っていこうと毎年全国各地で高校入学の闘いが続いてる。だが地域差は大きい。各地から届けられた情報は全国の一部ではあるが報告していきたい。
北海道からは、佐藤芽生(めい)さんが全日制の道立高校に合格したという知らせが届いた。佐藤さんはダウン症で、友だちとの関わりの中で社会性を育んでいきたいと地域の学校で学んできて、高校進学を選んだ。北海道では知的障害のある生徒の高校進学が進んできているが、学力試験のない定時制がほとんどであった。当初高校は受け入れ拒否の姿勢で、道教委との交渉ももった。今年の全日制合格により高校の門が広がり、定員内不合格を出さないこともより確実になった。
通学距離が遠いが、所属する会で関係機関の協力も得て支えていきたいという。テレビニュースでは佐藤さんの入試前後や卒式の様子だけでなく、青野洸夢(ひろむ)さんが2年間に5回も定員内不合格を出されたことや恵庭南高校での学びについて担任の新岡先生の話も交えて放映されていた。高校入学運動の積み重ねを感じる。
また一方、重度障害のある受験生を事前排除する文書があったことが昨年12月に新聞報道され(特別支援学校と定時制の「すみ分け」を、入学を希望する生徒の中学校に明示するというもの)、道教委との交渉をもって厳しく追及した。道教委は「表現が不適切」と説明しているが、障害の程度で分けて排除しているのは明らかだ。
千葉では、『千葉「障害児・者」の高校進学を実現する会』の支援で県立高校を受験した3人全員が合格し、他に1人が私立高校に合格した。しかし、意思疎通支援など、長年認められていた配慮(①必要に応じて介助者が面接官の発言を分かりやすい言葉で受験生に伝えること②本人の発する言葉で不明瞭な言葉があれば介助者が面接官に伝える(通訳する)こと③介助者が解答欄を指示すること)の3項目が入試直前で認められないという事態が起こった。それに抗議し一部は認められたが②の意思疎通支援は不提供のまま不利益を被った受験となった。しかもこの配慮内容は何月も県教委に相談した上で受験校に申請したものだった。
合格発表当日の交渉では、山形から駆け付けてくれた東北公益文科大学の藤原良太さんも「他の受検生との公平という面でも介助者による意思疎通支援は合理的配慮に当たると言える」と発言している。更に後日「法を遵守した受検のための特別配慮通知を出すよう」抗議及び申入書を提出した。一昨年の受験で濵野こゆきさんは「学ぶ意欲がみてとれない」という不当極まりない理由で定員内不合格とされ、昨年東京の高校に入学した。定員内不合格をなくすために県教委交渉で話し合ったり、高教組へ要望書を提出するなど取り組みは続いている。文科省の令和7年度入試の定員内不合格者数の公表では9人まで減ってきたが、まだ0にはなっていない。
愛知では、実現する会で小中学校の頃から相談を受け関わってきた2人が定員内で県立高校に合格した。アドバイスや励ましをし、今年度は県教委入試交渉の希望はなく行わなかった。愛知県はエレベーターの設置率が8・5%(163校中14校)で非常に低いということで、「公立高校にエレベーター設置を」の取り組みに力を入れている。2月のテレビ報道で「エレベーターがあるかないかが進学の選択肢」になってしまっているとあったが、他県でも同様な状況だ。階段昇降機で上下移動の対応はできても時間がかかってしまい、他の生徒と一緒に行動する時間(授業の始まりや休み時間)を阻んでしまうことの切実さもある。学校で障害のある生徒や教員などが生活することが想定されていないのが問題である。
静岡で3年間受験し不合格とされ続けた芹澤怜誠(りょうま)さんが、大阪に転居して府立松原高校を受験し合格した。
松原高校には、共に学ぶ環境を生徒が自らつくりあげる「仲間の会」があり、入学の前に集まりが開かれて怜誠さんも参
加した。【私のこれまでの人生】という作文では、「自分の人生を自分で選ぼうとすると、いつも妨害を受けました…」と自
分の思いが届いてこなかったこと、そして「新たな大好きを見つけ出しているところです」と今の気持ちを書いている。
おかあさんは大阪と静岡の違いに驚きながら、「一切の差別を許さない」という学校に入れていろいろ学んでほしいと願っ
ている。
「高校問題を考える大阪連絡会」は12月例会で受験者の「宣言文」を府教委入試担当者に渡しているが、今年の提出者
は芹澤さんだけだったという。大阪では、全国に先駆けて授業料の無償化が始まったが、その影響で公立高校の定員割れが
進み、「単純に喜べない結果」になっているという。
香川では、石川桃子さんが39回目、丸亀高校定時制の2次募集で受験した。15歳から36歳まで「挑戦」し続けている。5人受験で石川さんだけが不合格とされた。今年初めて、事前に書いた面接時に補助となる原稿を、言語障害があるためうまく聞き取れなくても面接の答えとして認めることになった。しかし結果は「総合的判断で不合格」であった。聞き取りや原稿をどのように評価したのか? 文科省も通知しているように「定員内でありながら不合格を出す場合には……その理由が丁寧に説明され」なければならないはずだ。通知に「能力・適性を判定して」とあるが、県は「能力が足らない人間は、後期中等教育を受けさせなくて良い」としていると石川さんは怒る。石川さんたちの会からは他に2人の受験生もいたが定員内不合格とされた。1人は特別支援学校へ、石川桃子さんともう1人の受験生が来年も挑戦する。
「障害者問題を考える兵庫県連絡会議」から「選考対象外」という前例があるか問い合わせがあった。尼崎市立の高校を
受験し定員内で1人だけ不合格とされ、再募集で定員割れの県立高校を受験したところ、合格発表で受験番号がなく、し
かも県教委発表では再募集での定員内不合格者は出ていなかった。中学校を通じて聞かされたのは「選考対象外」という
ことだった。受験時の特別措置について代読は認められず代筆のみ高校教員が対応、中学校担任の付き添いも認められず、
ほとんど配慮のない中での受験だった。この高校では6年前に医療的ケアの車椅子生徒を受け入れ、昨年度には身体・知
的障害生徒が合格したが、校長が代わり同生徒に対し「履修及び習得」「他の生徒と同等に扱う」など保護者が求める合理
的配慮は一切認めない姿勢だという報告を受けて、同団体は、受験した事実すらなかったこととし、障害の重い知的障害
生徒は受け入れないため「定員内不合格」を「選考対象外」と偽装した悪質な対応だと評価している。
東京では、連絡協が応援した受験生6人はすべて定員内で合格した。全日制3人、夜間の定時制3人。6人の内3人が支援級からの受験で比較的軽度の生徒だった。障害がある生徒を受け入れるのは初めてだが、親身な対応で受験生は長時間でもがんばれた学校もあれば、中には鼻水が出てティッシュを出して拭こうとしたら止められた学校もあるという。安心して受験できるように都教委とさらに話し合っていくという。
埼玉では、交通事故の後遺症で車椅子利用の生徒が受験し合格した。特別支援学校高等部進学を考えていたが、回復する中で高校生活も想像できるようになった。議員を通して埼玉連絡会に相談があり県交渉にも参加した。高校で学べるという情報が伝わることがまず第一だと感じる。埼玉では定員内不合格0といっても、とりわけ重度の知的障害の生徒は義務教育段階で特別支援教育へと分けられ、知る機会も受験する機会もない、その結果の0である。
昨年11月22日・23日に埼玉で全国連全国交流集会が開催されたが、「出会えないのはなぜ?」と現状を出し合う中で、一
緒に学ぶことを抜きに共生社会の実現はありえないことをあらためて認識した。また卒後について「共に働く」をテーマに議論したが、地域で卒後どのように生きていくかも見据えながら共に学んでいくことが重要ではないかと考えさせられた。
熊本では、昨年入学した廣岡映頼(てら)さんの(仮)進級が決まった。今年10月10・11日に熊本学園大学で「『障害児』の
高校進学を実現する全国交流集会」が開催される。障害者権利条約でも「中等教育から排除されない」と明記しているように、高校ぐらいまではだれもが学べるようにするべきだ。

