2023年度文科省定員内不合格調査の公表を受けて (全国連会報2024年1月号)

全国連運営委員 高校担当

昨年(2023年)12月19日に文科省ホームページに「令和5年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査 (公立高等学校)」が掲載され、2022年度(令和4年度)に続き全国各都道府県の定員内不合格者数が公表されました。(前述調査の31ページ 「2.志願者数が定員に満たない場合の対応等」)
https://www.mext.go.jp/content/20231219-mxt_koukou01-000026790_1.pdf

《全体的な状況》
「把握していない」として数が公表されなかった県が昨年度は6県ありましたが、今年度はすべて公表されました。昨年度公表されていなかった県は定員内不合格が多く出されている傾向にあり、そのことから全体数が昨年度1631人から今年度は2004人と多くなっています。また、最終の受験での不合格も631人(昨年度は505人)と多く、公教育としてこのような事態があっていいものか。他に受け入れ先がなければ、ほんとうに無責任と言わざるを得ません。
定員内不合格0は埼玉、東京、神奈川、愛知、滋賀、大阪の6都府県に加えて、昨年わずかに出されていた(5人以下)北海道、兵庫、和歌山の3道県が0となり9都道府県に増えました。
一方、100人以上の定員内不合格が出されている県が6県もあります。昨年度沖縄は全体数は「把握していない」と公表されていませんでしたが、今年度は226人と非常に多く、障害のある子どもや家庭の貧困のため学力が低いとされる子どもたちが定員内不合格にされているという問題点がこれまでも指摘されてきましたが、現状の深刻さを考えさせられます。
何年も定員内不合格を出され続けている受験者たちからの訴えで国会でも取り上げられ、まずは調査・公表をとの訴えに文科省も取り組まざるを得なくなり、昨年度から調査が始まりました。2年目ということでより減っていくことを期待しましたが、増減の結果はさまざまです。

《増えているのはなぜ?》
愛媛では67人から111人とかなり増えています。福岡でも昨年度、今年度と100人以上ですが、わずかに増えています。教育委員会や高校現場でどのような動きあるのか気になるところです。全国連の会員がいない鳥取、島根では20人前後増えています。千葉では、県との話し合いが熱心に続けられていて通知の文言を「定員の遵守」と強めたり、定員内不合格を出した高校に対してヒアリングを実施したりと解消に取り組んできているにもかかわらず増加しています。文科省の調査・公表が学校現場にどのように受けとめられているのかが問われるところです。

《一定の効果があった》
宮城では108人から38人に減っています。継続的に情報公開請求をしたり、文科省の公表を受けて、さらに定員内不合格をなくすよう県教委と話し合ったりしていることが報告されています。三重では59人から6人に減っていて、あらたな動きがあったのではと思われます。また、100人以上と多くはありますが高知では52人、山口では20人減っています。他に20人から30人の範囲で減っている県もあります。このことは、生徒数の減少により受験者数が減っていることもありますが、文科省の調査で一定の効果があったことが考えられます。

《原則として定員内不合格を出さないというが》
文科省のこの状況調査では定員内不合格に関連して「志願者数が定員に満たない場合の合否の決定に関する方針」(前述調査の30ページ)も調査されています。
「ア 文書、口頭、申し合わせ等により、原則として定員内不合格を出さないようにしている」に〇を付けているのが16から23に増えていますが、この中でも100人以上の定員内不合格を出している県や50人前後の県がいくつもあり、いったいこれはどういうことか? と思わされます。原則としては出さない方向だが、高校現場の判断で出していると教育委員会が逃げているとしか思えません。教育委員会は定員内不合格を出さないよう指導するだけではなく、教員が受けとめていくために必要な条件整備など学校現場を応援する姿勢が重要です。

《公表を受けての取り組みを》
今回の公表結果を受けて、各地の教育委員会に質問・要望しましょう。(例)
①定員内不合格が増えた(あるいは減った)要因は何でしょうか。
②どのような指導をしましたか。
③2024年度入試において定員内不合格を出さないよう指導してください。
世話人や高校担当等で連携して取り組んでいけたらと思います。

《人権モデルの考え方で》
文科省は、学校長が能力や適性等を判定し入学を許可するものであり、定員内不合格自体が直ちに否定されるものではない、定員内でありながら不合格を出す場合には、その理由が説明されることが適切、という指導で留まっています。「能力・適性」という文言が入学者選抜実施要項に書かれているなど、高校の教員の意識として、まだまだ適格者主義が根強く残っています。この「能力」というのは障害者権利条約に沿っていえば、まさに医学モデルの考え方であり、どの段階においても必要な配慮をして学べるようにする人権モデルの考え方に変えて、多様な子どもたちが一緒に学ぶ後期中等教育が保障されなければなりません。

《高校入学を実現しよう!》
これからまさに受験が始まります。これまで定員内不合格を出されても再度挑戦する人もいます。初めて受験する中学生もいます。受験に向けて精いっぱいの準備をしています。入学が実現するよう心から応援しています。   (文責竹迫)

全国連会報 2024年1月号より