〈今年の就学相談の状況〉現場にはいまだに「悪魔」が潜んでいる (会報2024年12月号より)
東京都・運営委員 片桐健司
いきなり、「悪魔」の見出しにびっくりされた方もいるかもしれません。来年4月の就学を楽しみにされている方にはショックな言い方でしょうか。でも、今年度全国連絡会にきた相談の状況をお話すると、そんな感じがしてしまうのです。
2022年に国連が分離教育をやめるよう日本政府に勧告をしたにもかかわらず、文科省はこれを拒否し、今の分離教育を続けると言い放ちました。特別支援教育を受ける子どもは増え続けています。特別支援教育の理解が進んだと文科省は言いますが、これは日本の学校教育の大きな歪みの結果であることを言わなければなりません。特に障害児や集団生活の苦手な子、勉強の苦手な子、個性的な子、感性の鋭い子たちにとって、学校という教育の場は本当に住みにくいところとなっています。不登校の子どもたちが増え続けている現状は何を物語っているでしょうか。学校が子どもたちにとっていづらい場所になっていることを真剣に受け止めなくてはいけません。
今年、相談が多かったのは小学校に入学したばかりの子どもたちの親からでした。6月、7月のプールが始まる頃になって、次々と相談が入ってきました。「プールに入るときの着替えが遅いとプールには入れさせないと言われました」「おむつをしている子は入ってはいけないと言われました」。
ここには、単にプールに入る、入らないというだけではない大きな学校の問題があります。それは、もともとこの子たちはここにいるべき子どもではない、どうやって追い出そうかという、学校の意図がそこにあるからです。どうやっていやがらせをして(いじめて)もういやだ、やめた、と言わせようか、多くの教員たちがそう考えている状況がそこにあります。そして、あってはならないいじめを学校自らが障害児にたいしては堂々としています。そして、あなたたちはここにいてはいけないのだから、少しは考えなさいと。
おむつをしている子の場合、入学前の面談で、学校、教委は、「この子がこの学校に来るのは不幸だ」「学校は、おむつの交換はしない、両親か代わりの人にやってほしい」と親にたたみかけました。教委、学校がグルになって「この学校に来るな」と言っているのです。分離教育どころではない。障害児を普通学級へ入れようとするあなたが悪い。リスクを受けるのは当然だ、という構えです。
それでも親は、がんばって普通学級に子どもを入れます。一応学校はおむつ交換をし、支援員も配置しましたが、よごれたおむつのまま放置されるなど、親としては不安な学校生活が続きました。さらに水泳指導の時期になると、おむつをしている子はプールに入れないと言われました。これについては、全国連メンバーが学校に行って校長と話し、撤回させましたが、2学期になってからも、学校がその子の支援をしっかりしてくれているのか、今後は大丈夫なのか、心配は続きます。
入学して半年以上たつのに、今も付き添いをしている親がいます。担任は、「他の子もいるのでお宅のお子さんまで見られません」と言います。何かというと、支援級に行くように言ってきます。「支援級に行くように言われているけれどどうしたらよいか」というのが初めの相談でした。多少、落ち着きがなかったりしているようですが、そんなに勉強ができないというわけでもなくて、危ないことをするわけでもありません。その時には「支援級には行きません、とはっきり言ってください」と伝えました。その結果、支援級に無理に行かされることはありませんが、担任はクラスの一員としてその子を見てはいなくて、付き添っている親任せにしてしまっています。
各地からの情報では、普通学級で元気に過ごしている子どもたちの話も届いています。不登校気味だったけれど、クラスの友だちに声をかけられて、少しずつだけど学校に行くようになったとの報告もありました。いろいろな子がいていいんだという学校、先生たちもいます。悲観ばかりはしていられません。
でもどうして、障害児が普通学級にいるというだけで、子どもたちがつらいめにあうのか。流れはインクルーシブと言われながら、障害児が普通学級に来るなんてとんでもないという「悪魔」がいまだに学校に潜んでいることも知っておかなければなりません。そこを、どう変えさせていくか、私たちにとって大きな課題です。